ブルース・スプリングスティーン──『Lucky Town』と『Letter to You』をつなぐもの

熊のキャラクター化によるオマージュイラスト。ブルース・スプリングスティーンへのリスペクトを込めて。
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二つのアルバムの距離感

ブルース・スプリングスティーンには数多くの名作があるが、その中で『Lucky Town』(1992年)と『Letter to You』(2020年)の二枚を聴き比べると、不思議な親和性を感じる。制作の時代も背景も異なるのに、どちらも“まっすぐなブルース”が鳴っているのだ。

素直な語り口と人間味

『Lucky Town』は、結婚や父親になることを経験した40代前半のブルースが、自身の人生を率直に歌い上げた作品である。派手さよりも日常を描き、そこに滲む人間味が魅力となっている。

一方『Letter to You』は、仲間や友を見送った70代のブルースが「自分は何を残せるのか」を問いながら歌うアルバムである。死や別れをテーマにしつつも、同じくらい誠実で、温かい人間臭さにあふれている。

再生と誠実さの響き合い

両作には「再出発」や「信頼」といった共通したテーマが存在する。
『Lucky Town』では個人の再生や信仰心が、『Letter to You』では音楽仲間や人生への再確認が描かれている。立っている地点は異なるが、いずれも「生き直す」「信じ直す」という力強さが響いている。

音楽的な手触り

サウンド面においても共通する“温度”がある。
『Lucky Town』はシンプルなルーツ・ロックで、肩の力が抜けた軽やかさを持つ。『Letter to You』もEストリート・バンドを従えながら、余計な装飾を排した素朴なライブ感を重視している。聴き心地の生々しさが両者を近づけているのだ。

「旅の途中」と「旅を振り返る」

違いを踏まえると、二枚は人生の異なる局面を照らしている。

  • 『Lucky Town』は40代のブルースが「まだ旅の途中」で幸せを探す歌である。
  • 『Letter to You』は70代のブルースが「旅を振り返りつつ、まだ続いている」と宣言する歌である。

したがって、時を隔てても両者は同じテーマで響き合い、「自分の今を正直に語るブルース」としてつながっているのである。

この話の続きはこちらです。▼

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