若き日の宣言「Better Days」
1992年、『Lucky Town』に収録された「Better Days」は、40代を迎えたブルースの再出発を告げる曲だった。結婚や父親になるというプライベートの大きな変化が、そのまま音楽に刻まれている。
意訳(Better Days)
「幸せはただ待っているだけでは訪れない。
欲しいなら、自分で立ち上がって掴み取らなければならない。
夢や幻想を追いかけているだけでは、何も変わらない。
人生のほんとうの喜びは、目の前にある“現実”の中にある。
目を閉じれば、まだ知らない未来に怯えることもできる。
けれど、胸の鼓動を信じて歩き出すなら、そこには“よりよい日々”が必ずある。
そして俺は、もう一度生まれ直すように、この瞬間から生きていくんだ。」
ブルースはここで、「幻想ではなく、いまこの瞬間に根差した幸福を選び取る」という決意を力強く示している。
老成した応答「Letter to You」
それから約30年後、2020年に発表された『Letter to You』。70代となったブルースは、仲間の死や友との別れを経験し、自分の人生をあらためて見つめ直した。そのうえで「音楽と共にある自分」を再確認するように歌い上げた。
意訳(Letter to You)
「君に手紙を書く。
そこには俺のすべてをありのままに綴る。
若さの輝きも、年月の重みも、
失ってきたものの痛みも、
忘れることのできない友の名前も。
俺はこれまでの人生で、間違いも恐怖も抱えてきた。
だがそのすべてが、いまの俺を形づくっている。
だから、この手紙には、俺が歩いてきた道を、正直に書き残す。
音楽に導かれ、音楽に救われ、音楽とともに今も生きている自分を。
これが俺の真実だ。君に伝えたいのは、それだけなんだ。」
この歌は、ブルースにとって“生きてきた日々の証”を誰かに託すような響きを持っている。
問いと応答としての二曲
- Better Days:「これからの日々をどう生きるか」
- Letter to You:「生きてきた日々をどう伝えるか」
二つの曲は、30年を隔てた問いと応答である。
40代のブルースが「これからの人生を掴み直す」と誓い、70代のブルースが「歩んできた人生を手紙に込めて届ける」と答える。まるで時間を超えて交わされた対話のように響いてくる。

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