エッセイブルース・スプリングスティーン『Badlands』が教えてくれた、欲の天井と40年の旅
高校1年の夏、ブルース・スプリングスティーンの「Badlands」を初めて聴いた。 Poor man wanna be rich, rich man wanna be kingAnd a king ain't satisfied till he rules everything 貧乏人は金持ちになりたがり、金持ちは王様になりたがり、王様は全て... エッセイ行き先を知らない川と私の45年—Bruce Springsteenと共に走る人生
第一章:Bruceとの衝撃の出会い 兄の部屋に、2枚組のアルバムがあった。 茶色がかったジャケットに写る男の横顔。タイトルは「The River」。Bruce Springsteen。当時中学生だった私は、その名前すら知らなかった。 何気なくレコードプレーヤーに乗せ、針を... エッセイ【第二部】枯れた川、そして見えない敵—45年後の私たちへ
第一部の振り返り 前回、私たちは1980年のBruce Springsteenのアルバム「The River」を通じて、当時のアメリカ労働者階級が直面していた現実を見てきた。 B面1曲目の「Hungry Heart」に登場する「行き先を知らない川」から、B面最後の「The River」の「枯... エッセイ【第一部】行き先を知らない川—Springsteenが1980年に見ていたもの
ライブで盛り上がる、重すぎる歌詞 Bruce Springsteenのライブで「Hungry Heart」が始まると、会場は一気に盛り上がる。特に1番は観客が大合唱し、みんな身体を揺らして笑顔で歌う。だが、この曲の歌詞を改めて見てみると、その内容はライブの陽気な雰囲気... エッセイ「No Surrender」と「Bobby Jean」──歌い続ける歌と、歌う必要のなくなった歌
ライブでの選択 ブルース・スプリングスティーンのライブを追っていると、不思議な違いに気づく。彼は「No Surrender」を今なお演奏し続けるのに対し、「Bobby Jean」はセットリストの頻度が大きく減った印象がある。どちらも仲間との絆を歌った曲であるに... エッセイ『Better Days』と『Letter to You』──ブルース・スプリングスティーンの問いと応答
若き日の宣言「Better Days」 1992年、『Lucky Town』に収録された「Better Days」は、40代を迎えたブルースの再出発を告げる曲だった。結婚や父親になるというプライベートの大きな変化が、そのまま音楽に刻まれている。 意訳(Better Days)「幸せはただ... エッセイ『The Rising』と分断の時代──スプリングスティーンが託した祈り
9.11から始まった物語 2002年に発表されたアルバム『The Rising』は、9.11同時多発テロの直後に生まれた。 炎に立ち向かった消防士や、その家族、そして都市に生きる人々の視点を取り入れながら、喪失と希望を同時に描いた作品である。 ブルース・スプリン... エッセイブルース・スプリングスティーン──『Lucky Town』と『Letter to You』をつなぐもの
二つのアルバムの距離感 ブルース・スプリングスティーンには数多くの名作があるが、その中で『Lucky Town』(1992年)と『Letter to You』(2020年)の二枚を聴き比べると、不思議な親和性を感じる。制作の時代も背景も異なるのに、どちらも“まっすぐなブ... エッセイブルース・スプリングスティーン──『Land of Hope and Dreams』は時代を超えて響く祈り
ブルース・スプリングスティーンの曲には、時代の影と光が折り重なっている。なかでも「Land of Hope and Dreams」を聴くと、ただのロック・アンセムを超えた「祈り」として胸に届く。 高齢化社会、移民問題、行き過ぎたナショナリズムの台頭──そんな現実...
1